第7回 介護―『手すりの設置で安心な暮らしを』

手すりは何のためにある?
「手すり」は、身体の動作を補助し、安全な歩行や移動を助けるといった役割があります。
半年前、飯田市内お住まいの弊社のお客様より、「足腰の弱くなってきたおばあさんが、一人でも安心して家の中を移動できるように手すりを設置してほしい…」とご依頼をいただきました。介護保険での助成金を利用し、廊下やトイレ、玄関など、普段の生活で移動する範囲全てに手すりを設置させていただきました。
後日おじいさんより、「おばあさんが、手すりを付けた玄関で靴を履くようになった。」という嬉しいお話をお聞きすることができました。
加齢や障害によって身体の自由がきかなくなってくると、何気ない立ち座りやちょっとした段差が事故の原因となることがあります。「浴室」や「階段」など、家の中でも身体のバランスを崩しやすい場所に手すりを設置することは、お年寄りの方、身体の不自由な方だけでなく、家族みんなにとって安心な配慮といえます。
とはいえ、「手すりなんてどれも同じ。握り棒さえ取り付けておけばよい。」というものではありません。つかまりにくい手すりは、使いにくいばかりではなく、転倒事故の要因にもなりえます。

そこで今回は「使いやすく、快適で安全な手すり」を実現するためのポイントをいくつか挙げてみます。

◆「浴室」手すりのポイント
①「洗い場内の移動」「浴槽への出入り」のときに、手すりがあると安心です。
浴室の床は通常濡れているため、大きく身体を移動するときには滑りやすいので注意が必要です。その他に、浴槽内での立ち座りや姿勢保持用の手すりを設置しておくと、万一の際のおぼれ防止にも効果的です。
②材質は、表面が樹脂被覆されたものが適しています。
濡れた手でもしっかり握ることができ、また、耐水性にも優れています。

◆「階段」手すりのポイント
①手すりは、階段を下りる際に、利き手側にくるように設置します。
これは、階段を下りるときに転落する事故が多いためです。なお、建築基準法施行例により、住宅の階段には手すりを設置することが義務づけられています。
②手すりは、できる限り連続して設置し、端部は壁側へ曲げこむと安全です。
途中で途切れないよう連続して手すりを設置し、転倒の危険を減らします。やむを得ず連続させることが出来ない場合でも、空き距離は40cm以下とします。また、階段の昇りはじめと降りはじめには、水平部分を30cm 程度設けて、階段手すりに連続させると、使いやすい安全な手すりとなります。手すりの端部は、壁側に曲げるか、下向きに曲げるなどして、衣類の袖が引っ掛からないような配慮が必要です。

◆「トイレ」手すりのポイント
①「便座への移動」「便座からの立ち上がり」のときに、手すりがあると安心です。
トイレに手すりを設置する場合、姿勢の安定と立ち上がり動作の補助のために、L型の手すりが一般的ですが、水平の板面とタテ手すりを組合せる場合もあります。また、便座までの移動用にヨコ手すりを設置しておくとよいです。
②材質は、木製か表面が樹脂被覆されたものが適しています。
金属の手すりは冬、冷たいので避けたほうがよいです。

歩行時の体の支え、立ち座りの手助けとなる手すりは、事故を未然に防いでくれます。お年寄りの方、身体の不自由な方だけでなく、家族みんなが安心して暮らせる安全な家づくりには手すりは欠かせないものとなっています。
今は必要ないと感じても、家族の10年後、20年後も考えたうえで家づくりを考えておくことも大切ですね。

手すりには全体重がかかる場合がありますので、安全のため必ず壁に下地があることを確かめたうえで、取付けることが重要です。手すりの取付ける壁面及び下地の強度など専門知識が必要となりますので、工務店や大工さんにご相談されることをおすすめします。